プロティノス・メモ






1.人物描写

「あなた自身の像を彫るのを止めないように」(プロティノス)

プロティノスについては、殆ど知られていない。301年に弟子のポルピュリオスによって書かれた哲学者の一生がある。そこにはいくつかの逸話や性格の特徴や師との会話の思い出が恭しく保存されている。しかし、ピリップス・アラブス皇帝時代にローマに来る前の人生については何も語っていない。彼の祖国、祖先、両親、少年時代などの情報は全くない。恰もプロティノスという個人と一体化することを拒否しているかのように、あるいは彼の人生をその思想に還元してほしいと思っていたかのように。これほど乏しい情報でプロティノスの魂の像をどのように辿ればよいのだろうか。

こんな声が聞こえる。作品があるではないか、エネアデスという人工的なタイトルの下にポルピュリオスが編纂した54の哲学論文があるではないか。プロティノスの魂を見つけるのはそこではないのではないか。

しかし、古代の記念碑的文学作品は近代の作品とは大きく異なる。 現代では、「マダム・ボヴァリー、それはわたしです」と言うことができる。作家は胸の内を打ち明け、感情を表し、自由になる。まだ言われたことのない独創性を求める。哲学者は自分の体系を提唱し、それを個人的なやり方で説明し、体系の出発点、その発展のテンポ、そして作品の構成を自由に選ぶ。つまり、自分特有の刻印を認めさせようとするのである。古代末期のすべての作品のように、エネアデスには他の束縛があった。ここでは、独創性は欠陥であり、新しいものは疑わしく、伝統に忠実であることは義務なのである。







(mardi 24.3.2020~)

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プロティノスの年譜

205: おそらくエジプトのリコポリスでプロティノス誕生

230-231: 28歳、哲学に打ち込むことを決意、アレクサンドリアで有名な講義を受けるも失望

232-242: 友人の勧めでアンモニオス・サッカスの講義を受け、10年間その弟子となる。同じ弟子にオリゲネスがいる。『プロティノスの一生』をまとめた弟子のテュロスのポルピュリオスは、その中でオリゲネスについて何度か触れている。

234: ポルピュリオス誕生

243: メソポタミアにあったゴルディアヌス皇帝の軍隊に参加。ペルシアの賢人に会うことを期待した。

244(3月か4月): ゴルディアヌスがローマの兵隊に暗殺される。プロティノスは苦労して脱出、アンティオキアに到着。このようなプロヌンシアミエントは3世紀には多かった。235年の皇帝アレクサンデル・セウェルスの死以来、ローマ帝国は重大な危機に陥る。皇帝はしばしば元老院が選んだが、軍の介入があった。プロティノスがゴルディアヌス軍に加わることができたのは、ゴルディアヌスに好意的な元老院と何らかの関係があったと想像される。

244: プロティノス、ローマに戻る。

244-253: プロティノス、少人数の生徒相手に講義するが、著作は残さず。

246: アメリウスがプロティノスの弟子になる。彼はプロティノスの講義ノートを作成。

253:  ガッリエヌスの統治が始まる。プロティノスはいくつかの概論を書き始める。

263: アテネでロンギヌスの生徒だったポルピュリオスがローマに到着。夏休みだったが、プロティノスには既に会っていた。ポルピュリオスはすぐには学校に入らず、アメリウスとの長い議論の後に、プロティノスの教育拠点の一つに入り、プロティノスの本が預けられた。

266: プロティノスの聴講生であった元老院議員サビニルスはこの年執政官で、ガッリエヌス皇帝の同僚であった。皇帝と皇后ともプロティノスを高く買っていた。プロティノスはカンパニアの破壊された町を復興して「プラトノポリス」というプラトン主義の共和国にしようと考えていた。しかし、皇帝の相談役の悪意により、この計画は実現せず。

268: うつ病になったポルピュリオスは自殺を考える。プロティノスは彼に旅に出るよう勧めると、彼はシチリアに旅立ち、皇帝プロブスの下、リリバエムに落ち着く。

268(夏): ガッリエヌス皇帝の暗殺、皇帝クラウディウス・ゴティクスの統治始まる。プロティノスの最後の病気が発症。

268-269: アメリウスがローマとプロティノスを去り、ティルスゼノビア女王の宮廷にいたロンギヌスに合流する。

269: プロティノスはローマを去り、カンパニアにあるゼートスの領地に引き籠る。

270: プロティノス、亡くなる。

301: ポルピュリオスの『プロティノスの一生』と『エンネアデス』第一版の執筆。ポルピュリオスは執筆時、68歳であったと明言している。

(dimanche 22.3.2020)








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