PAWL の趣旨



哲学には大きく二つの流れがあると思います。一つは大学での哲学、体系の構築を目指す理論に依存する哲学です。これに対して、生きることに直結する哲学があります。先行しているサイファイ・カフェ SHEはどちらかと言えば前者に当たり、科学の成果について考えることから人間に迫ろうとしています。この度、生きることに関わるもう一方の哲学を中心に人間を考え、語り合う場を新たに設けることに致しました。

その場を「生き方としての哲学」を語る「カフェフィロ・ポール(PAWL)」と名付けました。PAWLとは、わたしが将来を模索していた2006にパリのリブレリーで出会ったピエール・アドーPierre Hadot, 1922-2010という古代哲学の専門家が書いた『生き方としての哲学』の英訳Philosophy As a Way of Lifeの頭文字になります。この試みは、「サイファイ研究所ISHE(Institute for Science & Human Existence)」(科学と人間存在研究所)の活動の一環として進めることになります。


PAWL という言葉にはここに示したように、動作を一方向に制御するためのラチェットと組み合わせて使われる逆回りを防ぐためのツメという意味があります。広く考えると、PAWLが「歯止め」の役割、今進行している社会の優勢な流れに対するフィードバック、あるいは異議申し立ての機能を担っているとも解釈できます。それはまさしく哲学の役割とも言えるもので、当初の考えを超える意味が与えられた場になったように思います。これらのことを考慮に入れ、カフェPAWLという場を定義するとすれば、現段階では次のように言えるのではないでしょうか。

“生き方としての哲学の歴史を振り返り、
その哲学を考え、語り、使い、そして自らを創り変えるための場”

その様式については試行錯誤が続くと思いますが、当面、生きることに関わる哲学を追求した哲学者の歩みを振り返ることにより、そこで問題にされたテーマにわれわれ自身がどのように向き合うのかについて考え、語り合うことを中心に据えることにしました。このような営みの中で、人間の生き方、人間存在そのものに対する理解を深めることを目指します。ご理解、ご支援のほど、よろしくお願いいたします。


 (2014年1月2日)




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